「協力隊の森」植林活動報告(2023-2025)

  • 2023年度の植樹活動報告

 2023年11月12日(日)秋晴れの下に、秋篠宮殿下のご臨席を仰ぎ、全国育樹祭の記念式典がアダストリア水戸で開催された。これまでの長年に渡る「協力隊の森」植樹活動が評価され、弊会の担当者が記念式典に招かれた。これに先立ち、9月30日(土)全国育樹祭の記念植樹活動として、茨城県立並木中等学校の生徒12名と教職員・OVらはブナ・ミズナラの植樹活動を、翌週の10月7日(土)、JICA研修員やOVらで植林を行った。こうした今年度の植樹活動は、OVやその関係者ら延べ約100人の参加者があり、約200本の苗木が植えられた。

 しかしながら、6月3日(土)台風5号により線状降水帯の発生が生じ、常陸太田市立里美中の生徒達との植林は中止に追い込まれたため、地域ヒノキ材を用いての箸づくりの活動に切り替えた。同時に、この植林地域は久慈川水系の里川上流域に棚倉断層が秋田県男鹿半島まで伸びていることから、田切美智雄茨大名誉教授による日本列島の成り立ちの地質史を語っていただいた。この地域は、約2千万年前にユーラシア大陸から離れた北日本列島が、1千5百年万年前に現在の位置に移動し、茨城県から宮城県にかけての阿武隈山地は海洋の群島として連なっていたこと。その後、日本海側からの圧力がかかり、大きく隆起し、阿武隈川と久慈川の支流の争奪に繋がったことも学んだ。

 6月14-15日(水・木)、中村徹筑大名誉教授の協力の下、協力隊の森で草本類の植生調査を行った。ブナ・ミズナラなどの植栽木を囲む作業路の植生には、ミツバツチグリ、キジムシロ, オオバコ, ムラサキケマン, オヒシバ、などが分布していたが、秋になると異なった草本植生群落に遷移することも学んだ。8月4-5日(土・日)、蝶類の調査は中村寛志信大名誉教授のご指導の下、蝶類も移動するため隣接する里美牧場での広範囲の生態調査を実施した。当初、絶滅危惧種チャマダラセセリの食草、ミツバツチグリが協力隊の森に生息していることから、この蝶類が生息していることを期待されたが、残念ながら確認できなかった。多くの人は、キャンプ場の一面に芝の植生に目を奪われ、蝶類も多く考えるかも知れない。しかし、こうした人工植生では逆に蝶類が少ない傾向にあるという。また、協力隊の森に植生するミツバチチグリは、チャマダラセセリの孵化を迎える5月の連休と8月上旬に観察されやすいとのこともあり、次回の調査に期待が持てると感じた。今回の調査で理解したことは、森林群落のみではなく、草本植生なども含めて多様なエコトーンの植生を整えることで、幾多の動植物が相互で営める生物多様性保全の環境が整うことの大切さを学んだ。

  • 2024年度の植樹活動報告

 2024年7月15日(祝日)常陸太田市市制合併20周年記念式典が、多くの関係者を集めて同市内で開催された。その中で弊会は長年に渡る「協力隊の森」植樹活動が評価され、賞状と記念の盾が授与された。これまでに参加をいただいたOV、その友人や関係者の方々(述べ人数:約1100人以上)の協力と支援によることが大きく、この場を借りて感謝したい。2006年に茨城県OV会30周年記念行事として、新たに植樹活動事業として生まれたが、海外で殉職されたOVへの思いもあり、精霊のやすらぎの森へとの思いに繋がった。この背景には日本では、亡くなられた方々が天から常緑樹を目指して降臨すると信じられ、日本の神社仏閣に緑地が多いのも納得がいく。

 そして今年度の森づくりは、11月2-3日(土・日)に、OVらが、11月7日(木)、常陸太田市立里美中学校の生徒教職員が、延べ55名の参加者を得て120苗を植えたが、6月24日(月)常陸太田市立里美中学校において中村徹筑大名誉教授による「世界におけるブナの位置付け」の講演が行われた。同中の1-2年生と教職員約30名が参加した。自然の中では植物は必ず多くの種類・個体と一緒に生活している。このようなある地域に生活している植物全体を「植生」といい、植生は温度と降水量によって世界中の植生タイプも異なることがスライド写真で説明された。特に、この講演会で注目を集めたのが、アフリカ大陸のナミビアのナミブ砂漠だけに自生しているキソウテンガイ(奇想天外:キソウテンガイ科唯一の種)だ。その異様な形態とその生態には、生徒や教師も驚きの表情を隠せなかった。

 昨年度、OV会は、三五自然共生基金(本部団体:名古屋市)の助成金(題目『次世代に残す郷土樹種による森林群落』)により、植樹活動が実施されたため、8月2日(金)に、その報告発表会が同基金本部で開催された。昨年度、同助成金を得た6つの団体が、活動報告会に臨んだ。植樹活動担当者が6団体の最初のプレゼンターを務め、かなり緊張したが、学術経験者による質疑応答にも無難に対応出来た。同基金の敷地内には本部棟を囲むように田んぼ、森やビオトープが広がり、まるで都会のオアシスのようであった。その中に小さい小屋があり、ここにはホタルの育成のため水槽も設けられ、地元の小学校との学びの場として、ホタルを生育しているとのことであり、オーナーの企業理念を感じ、アットホームで素晴らしい環境保全団体であることを知った。

  • 2025年度の植樹活動報告

 2025年10月25日(土)JICA研修員やOVら17人が参加して、ブナ、ミズナラ、クヌギ、トチノキ、エゴノキ、キハダ、カシワ、ヤマボウシの植林を行った。JICA研修員の方々も、日本の情報には熟知しており、この地域ではクマによる被害情報はないか、クマが生息していないかとの質問も受けた。確かに隣町で出没情報もあったが、今はそうした情報も聞かないので安心して植樹をと伝えると、安心した表情を見せた。植林後に近くの釣り堀センターで焼き魚による懇親会も行われ舌鼓を打った。また、11月1-2日(土・日)にはOVやその家族や関係者17人が集いブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹種を植え、11月1日(土)の晩にはケータリングを持ち込んで懇親会も行われ、大いに盛り上がった。今年度の植樹活動には、延べ約50人以上の参加者があり、多くの苗木が植えられた。